「人物重視」を、曖昧な言葉で終わらせない。【愛知県瀬戸市役所人事課 インタビュー】

2026.09.14

  • 利用団体インタビュー

応募者数2割増と「質の維持」を両立した、瀬戸市役所3年間の採用のかたち

受験者数の減少、点在する採用業務、記録に残らないやり取り。多くの自治体が抱えるこの状況に、愛知県瀬戸市役所はどう向き合ってきたのか。パブリックコネクトの1年間の試行導入から始まり、現在3年目。

その間に同市の取り組みは単なるシステムの置き換えにとどまらず、試験設計の根幹にまで及び、事務職の応募者数は前年度比で約2割増加しています。

「応募者が増えても、受験者の意欲低下は感じない」と現場での手応えを語る人事課の三輪さん。そして導入時から採用改革を推進してきた後藤さんに、導入前の課題から採用活動の変化、これから目指す「採用の成功」までをうかがいました。

瀬戸市役所について

●    人口:123,203人(2026年7月1日推計)

●    職員数:838名

●    対象職種:事務職、消防職、保育職、専門職・技術職、労務職

●    パブリックコネクト導入:3年目(2026年度時点)

●    導入時の採用課題:受験者数の減少(事務職は約300人から半減)。申込は紙とPDFで管理し、受験者対応は電話中心。募集要項・連絡・PRが分散。

●    導入の目的:採用業務の一元化による時間外勤務の削減と、母集団の確保。

●    導入後の変化:事務職の応募者数が前年度比 約2割増(150人弱→約180人)。質・意欲の低下は見られず。

お話をうかがった方

後藤 さん 瀬戸市役所 人事課 係長(入庁14年目)

環境課でごみ減量・収集業務の委託管理を5年、社会福祉課で障害福祉分野を3年半経験したのち、人事課へ。現在は職員採用、福利厚生、障がい者雇用を担当。

三輪 さん 瀬戸市役所 人事課 主任(入庁9年目)

高齢者福祉課で 5 年間認知症や介護予防業務に従事し、人事課へ異動。人事給与係で給与・職員の健 康管理を担当したのち、昨年度から人材育成係で採用を担当。

導入前|「点」で散らばっていた採用業務と、受験者減少

― パブリックコネクトを知る前、瀬戸市役所の採用にはどのような課題がありましたか。

後藤さん:一つは受験者の管理です。それまでは電子申請システムを使っていましたが、申込みを1件ずつPDFで出力して、つなぎ合わせて紙に印刷する作業を毎回やっていました。

もう一つは受験者とのやり取りです。電話が中心でしたので、記録に残らないという課題がありました。

― 採用活動そのものについてはいかがでしたか。

後藤さん:もともと母集団の大きかった事務職や消防職、保育職は年々減少傾向。応募者数が限定的だった専門職・技術職は横ばいでした。

三輪さん:私が瀬戸市役所を受験した時は、事務職に約300人の受験者がいましたが、今は半分ほどになっています。率直に驚きましたし、公務員という選択肢の認識が変わってきているのか、受験者の気持ちがどう変わったのかと、いろいろ考えました。

10年に満たない期間で、母集団が半分に。これは瀬戸市役所に限った話ではありません。

導入の決め手|「公務員に特化している」という思想への共感

― 数あるサービスのなかで、パブリックコネクトの第一印象はいかがでしたか。

後藤さん:今でも記憶に残っているのは、「公務員の魅力をもっと多くの人に知ってもらいたい」「そのための手助けとして使ってほしい」という考え方でした。

― 機能面で魅力に感じられた点はどこでしたか。

後藤さん:すべてが一つで完結することです。募集要項はホームページ、受験者への連絡は個別メール、PRはSNSと、採用にかかるものがバラバラになっていました。それがパブリックコネクト一つにまとまる。時間外勤務の削減も課題でしたので、減るといいなと期待がありました。

変化①|「人物重視」を、試験設計に落とし込む

近年、「人物重視」を掲げる自治体は増えました。ただしその中身は二つに分かれます。応募のハードルを下げる手段としてのものと、受験者と自治体が互いを正しく知るためのもの。瀬戸市役所は明確に後者でした。

― なぜ「人を見る」ことに力点を置かれているのでしょうか。

後藤さん:受験者の方が入庁されたら、私たちは同僚になり、仲間になります。だからこそお互いが、入庁してから「こんな はずじゃなかった」とならないよう、相互のミスマッチをなくしたいという気持ちがありました。

採用試験で実施している3分間の自己PRも、受験者がありのままを出せる環境づくりに重きを置いてきました。

受験者一人ひとりと向き合い、しっかり理解したうえで判断したい。その考えでずっと取り組んできました。

▼試験フローの変化

この考えが、試験の構成を変えていきました(事務職の例)。

【従来】 1次:書類選考のみ → 2次:グループワーク+集団面接 → 3次:総合試験(筆記)/人物試験(個人面接)

【現在】 1次:オンライン集団面接 → 2次:グループワーク+カジュアル面接 → 3次:総合試験(筆記)/人物試験(個人面接)

後藤さん:事務職はもともと 1 次が書類選考のみでした。人数が多いからこそ、しっかり向き合って判断したいと思い、オンライン 面接で一度顔を合わせるように変えていきました。

変化②|2026年度から始めた「カジュアル面接」

― 「カジュアル面接」はあまり聞き慣れない試験です。どのような狙いで始められたのですか。

三輪さん:相互理解の場にしたい、という狙いです。受験者の方にリラックスして素の姿で話してもらいつつ、職員の掛け合いから職場の雰囲気を感じて「ここで働きたいか」を確かめてもらうために始めました。採用試験を通じて、受験者にも瀬戸市を面接してほしいと考えています。

▼進め方

2次試験のグループワーク(1グループ6名)に続けて実施。前半3名・後半3名に分かれ、人事課職員1名と若手職員1名のペアが、受験者1名と向き合います。

まず職員から自己紹介し、受験者にも趣味などを交えて自己紹介してもらってアイスブレイク。その後、3枚のカードから話しやすいテーマを1枚選んでもらい、約10分かけて深掘りしていきます。最後は受験者からの逆質問の時間を設けて終了します。

― カジュアルな場をつくることは、難しくありませんでしたか。

三輪さん:一番難しかったのは、設計段階でした。「私たちの思うカジュアルとは」「どうしたら受験者がリラックスしてくれるのか」「どんな雰囲気をつくればいいのか」をカジュアル面接に参加する職員全員で考え、すり合わせました。

ただ、いざ受験者と向き合ってみると、思っていたほど難しさは感じませんでした。ペアに入る若手も話しやすい人を選んだこともあり、私たちも素で試験に臨めました。

グループワークでは大人しかった方が、カジュアル面接ではとても楽しそうに話してくださり、これまでの試験では見えなかった一面が見えたと感じています。

― 試験としての難しさはいかがでしたか。

三輪さん:二つありました。一つは、試験官の経験がない若手職員と、私たちの基準のすり合わせです。研修で、時間を計って面接練習を行い、試験官同士で採点し合う実践を重ねたうえで本番に臨みました。

もう一つは人事課内での採点基準の差です。ただ、無理に統一せず、基本は各グループの判断を尊重し、迷うケースのみ最後の選考会議で詳しく話し合って決定しました。

変化③|求める人物像を、自分たちの言葉にする

2025年度、瀬戸市役所は求める人物像の言語化に取り組みました。パブリックコネクトのリクルーティングプロデューサーが伴走し、たどり着いたのが「土」と「火」というキーワードです。

― なぜ、求める人物像を改めて言語化する必要があると思われたのですか。

三輪さん:今までは、採点基準がふわっとしていました。打ち出していた人物像も、どこの市町村でも言えるような内容でした。

採点基準を明確にし、受験者の印象に残るものにする。そうすることで私たちも自信を持って採点でき、受験者へのPRにも繋がるのではないかと考えました。

― 実際に受験者へは届いている実感はありますか。

後藤さん:正直、課題も見えました。1次試験で「土と火のどちらに当てはまりますか」と全員にうかがったのですが、想定より「火」と答える方が多かったんです。

私たちは「一歩踏み出せる人」という意味で火を表現したつもりでしたが、「仲間と一緒に新しいことをやってみたから火です」という受け取り方をされる方が多かった。今後の打ち出し方として変えていきたい点です。

一方で、土と火の中身を理解したうえで受け答えされる方もいて、「しっかり見てきてくれているんだな」と印象が良くなりました。

三輪さん:まだ伝えきれていない部分があると思うので、どうすればうまく伝わるのかを、もう一度見直したいです。

どちらが良いという話ではなく、両方が必要であり、一人ひとりの中に混在している。それをどう届けるかが、瀬戸市の次のテーマです。

成果|事務職の応募者は約2割増。それでも「質の低下は感じない」

― 選考方法を変えたことで、数字にはどのような変化がありましたか。

後藤さん:1次試験を書類選考からオンライン面接に切り替えたタイミングで、一度応募者数が減少しました。事務職の応募者数は、底だった昨年度の150人弱から、今年度は約30人増えて180人ほど。2割前後の増加となりました。

応募者を増やしたい。しかし増やせば意欲や質が下がるのではないか。これは、多くの自治体からうかがう不安です。

― 応募者が増えたことで、質や意欲の変化は感じられましたか。

三輪さん:2次試験のグループワークとカジュアル面接では、どのグループも「受験者が素晴らしかった」と合否判定に苦戦しました。応募者が増えたことで意欲の低下した方が多かった印象はありません。

2次試験に進む人数も昨年度より増えていましたが、自分の中に芯があって、しっかり答えられる方が目立ちました。1次試験でも「なぜ瀬戸市なのか」を明確に話す方が多かったです。

母集団の量と質はトレードオフではない。瀬戸市役所の一年は、そのことを示しています。

パブリックコネクトへの評価|「採用担当」に伴走する存在

― パブリックコネクトを利用して、明確に変わったと言える点はどこでしょうか。

後藤さん:市役所は人事異動を繰り返しますので、私たちも採用の経験は多くありません。そんな中、リクルーティングプロデューサーの方が助言をくれて、一緒に考えてくださる。そこが一番のメリットだと強く感じています。

カジュアル面接にしても、大きな説明会のスライドにしても、ポイントごとに手助けをいただけます。私たち2人だけでは思いつかないことも、助言をいただくことで実現し、前進できました。

― リクルーティングプロデューサーは、どのように見えていますか。

三輪さん:情報量と、それを分析する力が桁外れだと感じます。私たちでは思い浮かばなかったことを教えていただけますし、課題や解決策を一緒に考えていただけます。

私たちが持ち合わせていなかった視点や、うまく言葉にできないものを言語化していただけたことが、多々ありました。

後藤さん:担当の方が変わったとしても、今と同じように伴走していただけるとありがたいです。それが一番の期待です。

これからの「採用の成功」

― お二人が考える採用の成功とは、どのようなものですか。

三輪さん:今年採用活動を変えた目的の一つが、配属先の職員、入ってきた本人双方のミスマッチを無くすことでした。私にとっての採用の成功は、どちらも「来てくれて良かった」「入って良かった」と思って仕事ができることです。

後藤さん:三輪さんと同じ考えです。「来てくれて良かった」「入って良かった」という声を聞けるのが、私たちの仕事の価値であり、やって良かったと思えるタイミングです。その声を一人でも多く聞けるように頑張っていきたいです。


瀬戸市役所の3年間は、システムを入れただけでなく、「人物重視」という言葉の中身を具体化し続けた時間でした。

1次試験で必ず一度会う。2次試験を、互いを知る場に変える。求める人物像を自分たちの言葉にして、届き方まで検証する。その一つひとつが、応募者数の増加と、選考現場の手応えにつながっています。

採用の成功は、「来てくれて良かった」「入って良かった」と互いに思える状態をつくること。その実現に向けて、パブリックコネクトは採用プラットフォームの提供にとどまらず、リクルーティングプロデューサーによる伴走で、すべての官公庁・自治体とともに「固有名詞で選ばれる採用」を目指していきます。

取材協力:瀬戸市役所 人事課 / 取材・文:株式会社パブリックコネクト