
「心のこもった採用」は、担当者の余裕から。一関市が2年間で変えてきた採用活動【岩手県一関市役所 職員課 インタビュー】
利用団体インタビュー
受験者数は減っている。もっと採用PRにも力を入れたい。でも、目の前の採用試験を進めるだけで精いっぱい——。そんな課題を抱えていた岩手県一関市では、パブリックコネクトの導入をきっかけに、採用活動を少しずつ変えてきました。
応募・受験者管理のデジタル化に加え、採用動画や記事、オンライン説明会、内定者との懇談会、市長の直筆メッセージ送付など、約2年間で取り組みは大きく広がっています。
2026年度の採用試験では、受験者数が前年と比べて約20%増加。採用が難しい専門職でも応募が増えるなど、変化が表れ始めています。
一関市で採用を担当する千葉さんに、導入前の課題から、実際に取り組んできた採用施策、そしてこれから目指す採用のあり方までをうかがいました。
一関市役所について
● 人口:約10万人
● 職員数:約2,000人(会計年度任用職員を含む)
お話をうかがった方
千葉さん 一関市役所 職員課
2023年度に現在の部署へ異動。採用を中心に、服務管理などの人事業務を担当。パブリックコネクト導入後、オンライン説明会や採用PR、内定者フォローなど、一関市の採用施策を推進している。
「課題は分かっている。でも、向き合う時間がなかった」
千葉さんが現在の部署へ異動したのは2023年度。当時、人事業務を担当する職員は係長を含めて3人。その中で、採用業務は千葉さんが主担当として一人で担っていました。前任者のマニュアルを確認しながら、採用業務を一つずつ覚えるところから始まります。
当時の一関市では、受験申込みの一部を郵送で受け付け、受験票を作成し、写真を貼り付けて郵送するなど、紙を使った作業も多く残っていました。採用試験が始まれば、試験内容や合格基準の検討、受験者への連絡など、次々と業務が発生します。
― 当時、採用担当としてどのような課題を感じていましたか。
千葉さん: 一番大きかったのは、受験者数が減っていたことです。グラフにすると驚くくらい右肩下がりで、前年より何十人という単位で減ることもありました。「このまま数年経ったら、本当に応募してもらえなくなるんじゃないか」という危機感がありました。
でも、日々の採用業務に追われていて、課題があると分かっていても、それについてゆっくり考える余裕がなかったんです。
当時、市のホームページに掲載していた採用情報も試験案内が中心で、「どんな人が働いているのか」「どんな仕事があるのか」といった、働くイメージにつながる情報はほとんど発信できていませんでした。
人を呼び込みたいのに、PRするものがない。でも、作る時間もない。そこが大きな課題でした。
導入の決め手は、「オールインワン」「伴走」「コンテンツ」
採用への危機感が高まるなか、千葉さんは民間企業の提案にも積極的に耳を傾けるようになります。その中の一社が、パブリックコネクトでした。
― 導入を検討するうえで、どのような点に魅力を感じましたか。
千葉さん: 大きく3つありました。
一つ目は、公務員採用に特化していて、応募から受験者管理まで一連の流れをまとめて管理できることです。
二つ目は、リクルーティングプロデューサーによる伴走です。システムを導入して終わりではなく、その後も相談しながら採用活動を一緒に考えてもらえることに魅力を感じました。
三つ目が、コンテンツです。記事やチラシ、動画などを制作してもらえるだけでなく、一つ一つのクオリティがとても高いのも大きかったですね。
それに加えて、代表の平田さんのプレゼンテーションも印象に残っています。サービスの説明だけでなく、自治体の採用に対する熱意が伝わってきて、心を打たれました。サービスの内容だけではなく、「この人たちと一緒にやってみたい」と思えたことも、導入を後押ししたと思います。
一関市では2024年度にまず試行的に導入し、その後、継続利用に向けて予算化を進めました。その際に意識したのが、サービス利用料だけでなく、職員が自前で同じ業務を行った場合の「時間」まで含めて比較することでした。
― 庁内では、どのように費用対効果を説明されたのでしょうか。
千葉さん: 例えば動画を一本自分たちで作るとしたら、企画、撮影、編集と何十時間も必要になります。その時間を人件費に換算して、「自前で作った場合にはこれだけかかる。一方で、サービスを使えばこの金額で、このクオリティのものができる」と比較しました。
自分たちでたくさんの時間をかけて作ったとしても、同じクオリティにはなりません。そういったところまで含めて、費用対効果を説明しました。
業務を効率化して生まれたのは、「考える時間」
導入後、応募や受験者管理をデジタル化。受験票の作成や郵送などの作業が減り、受験者とのやり取りもまとめて管理できるようになりました。同時に、職員インタビューの記事や採用動画など、これまで不足していた採用PRのコンテンツも増えていきました。
― 導入後、最も大きく変わったことは何でしょうか。
千葉さん: 「考える余裕」ができたことですね。それまでは、やらなければいけないことを精いっぱいやって終わりでした。
業務に少し余裕ができたことで、リクルーティングプロデューサーから提案をもらった時にも、「一関市だったらどうできるだろう」と考えて動けるようになりました。本当に重要な課題に、自分の時間を使えるようになったことが大きかったと思います。
「知ってもらう場」を増やす。月1回のオンライン説明会
考える時間が生まれたことで、一関市の採用施策も広がっていきました。その一つが、月1回程度実施しているオンライン説明会です。
きっかけは、リクルーティングプロデューサーとの「一関市を知ってもらう接点をもっと増やしたい」という会話でした。リアルな説明会を頻繁に開催するのは負担が大きいため、オンラインで定期的に求職者と接点を持つことにしました。
― オンライン説明会を続けてきて、手応えはいかがですか。
千葉さん: もう何十回と開催しています。説明会に参加して、その後採用試験を受け、実際に今一緒に働いている職員も何人もいます。事後アンケートでもポジティブな意見が多く、効果の高い取り組みだと感じています。
一関市では、採用動画もオンライン説明会や学校での説明などで活用しています。説明会で使いやすいショート版も制作していただき、2026年度には事務職だけでなく専門職を紹介する動画も依頼しました。制作した動画は、SNS広告などと組み合わせて発信しました。
― 採用動画には、どのような効果を感じていますか。
千葉さん: 私が口で一生懸命説明するより、動画を一本見てもらう方が、働いている人の雰囲気はずっと伝わります。
学生の方も「実際にどういう人が働いているのか」「どんな雰囲気なのか」をすごく気にされています。動画なら、それを目で見て感じてもらえる。説明会でも、本当に様々な場面で繰り返し活用しています。
採用動画を活用した説明会の様子。制作した動画は、オンライン説明会や学校での説明など、さまざまな場面で活用されています。
「採用するまで」ではなく、「入庁してもらうまで」
2026年度、一関市が新たに力を入れているのが、最終合格後のフォローです。合格後の辞退を防ぐため、最終合格者や内定者と若手職員による懇談会を始めました。
― 実際に懇談会を開催してみて、どのようなことが見えてきましたか。
千葉さん: 思っていた以上に、皆さん不安を抱えていることが分かりました。「本当にここに就職していいのか」「どんな職場なんだろう」と、いろいろ考えています。
そこで、年齢の近い若手職員と気軽に話せる場をつくりました。参加者同士にも「これから同期になるかもしれない」という横のつながりができますし、入庁前から若手職員ともつながることができます。
参加した若手職員に自身の内定時について聞いても、「不安だった」という声が多くありました。内定を通知した後に市役所との接点が少ないことによる不安は、採用する側からは見えにくいものだったんだと気付かされました。
今年はさらに、市長の直筆メッセージも合格者へ届けています。
何か一つやれば辞退がなくなるわけではないと思っています。でも、一つひとつ積み重ねて、「ここで働こう」と安心して思ってもらえる環境をつくることが大事なのかなと思います。
受験者数は前年比約20%増。専門職にも変化
こうした取り組みを約2年間積み重ね、2026年度の採用試験では受験者数が前年度と比べて約20%増加。採用が難しい専門職・技術職についても、応募が増えています。
― 受験者が増えた要因を、どのように捉えていますか。
千葉さん: 何か一つが理由というより、これまでやってきたことの積み重ねだと思っています。
応募が少ない職種について記事や動画を作ったり、オンライン説明会を続けたり。今年はSNS広告も活用して、若い方に見てもらえるよう発信方法も工夫しました。一個一個やってきたことが、少しずつ実を結んできたのかなと思います。
情報を届け、知ってもらい、話し、応募してもらい、入庁までフォローする。求職者との接点を一つずつ増やしてきたことが、一関市の採用活動の変化につながっています。
「伴走」とは、答えをもらうことではない
こうした施策の多くは、一関市とパブリックコネクトのリクルーティングプロデューサーとの対話から生まれました。
― パブリックコネクトの「伴走」を、どのように感じていますか。
千葉さん: 「これをやってください」と言われるわけではありません。いろいろな可能性や他自治体の事例を情報提供してもらう一方で、一関市の状況も伝えています。
そのうえで、「だったら一関市ではこれができそうですね」と一緒に考えています。主体はあくまで市側です。自分たちができる範囲で、効果が高そうなものを一緒に考えていく。そのアプローチが良かったと思います。
コンテンツ制作についても、市の担当者の準備負担が少ないことがメリットだと感じています。こちらで構成やデザインまで細かく考えるのは、時間的にもノウハウ的にも難しいです。
こちらの伝え方が足りなかったとしても、意図を汲みとって仕上げてもらえるので、すごく助かっています。その分、自分は別の仕事に時間を使えます。
公務員志望ではない人にも、市役所の仕事を届けたい
受験者数が増加に転じた一方、人口減少が続くなかで、今後はこれまで以上に採用対象を広げていく必要があると、千葉さんは考えています。
― これから取り組んでいきたいことはありますか。
千葉さん: 今までは、ある程度公務員に興味を持っている方への情報発信が中心でした。これからは、「今は公務員を考えていないけれど、知ったら興味を持つかもしれない」という方にも届けていきたいです。
もう一つは、市役所の仕事をもっと具体的に伝えることです。地域づくり、保健福祉、農林、土木、企画、総務など、市役所には民間企業では考えられないほどたくさんの仕事があります。「市役所にこんな仕事があるんだ」と思ってもらえるように、それぞれの仕事を深掘りしたコンテンツも作っていきたいですね。
そして、採用だけではなく、その先の定着も見据えています。今回初めて実施した内定者懇談会を、入庁後のフォローにも生かしていくことを検討しています。
知識を伝える場では動画研修などのデジタルを活用し、人間関係づくりや対話が必要な場面では、あえて直接会う。採用後までつながる仕組みをつくっていきたいと考えています。

「心のこもった採用」は、担当者の余裕から
― 最後に、千葉さんが考える「採用の成功」とは、どのようなものでしょうか。
千葉さん: 採用担当になって感じるのは、採用活動って、少し婚活やお見合いに近いということです。これから長く一緒に働く人との出会いなので、採用して終わりではなく、その後まで見据えることが大事なんだと思います。
ただ試験をして通知を送るだけではなく、心のこもった、血の通ったアプローチをする。それが採用の成功につながるのではないでしょうか。
でも、そういう採用をするためには、まず採用担当者自身に心の余裕がないとできません。パブリックコネクトを使うことで自分自身に余裕ができて、その分、応募者や内定者に向き合えるようになりました。
心のこもった採用をするためには、まず担当者に余裕が必要なんだと思います。
一関市がこの約2年間で行ってきたのは、採用活動を一度に大きく変えることではありません。
応募管理を効率化し、動画で職員の姿を伝え、オンラインで求職者と話し、合格後にも人と人がつながる場をつくる。一つひとつ、「今の一関市にできること」を積み重ねてきました。
採用担当者に生まれた余裕が、新しい施策を生み、求職者一人ひとりと向き合う「心のこもった採用」につながっています。
取材協力:一関市役所 職員課 / 取材・文:株式会社パブリックコネクト


